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玄米と白米:日本の主食の歴史と栄養を考える

日本人の多くが食べている白米について、健康上の問題を指摘する意見が増えています。玄米を推奨する方々も少なくありません。お米は私たちの主食であるにも関わらず、現代では稲作を知らない方も多いため、その歴史と栄養について考えてみましょう。

目次

現代の稲作事情

昔は稲を刈り取った後、稲穂を乾かすために「稲架(はさ)掛け」をして天日干しをしていました。しかし現在では、その99%が人工熱風乾燥に切り替わっています。筆者の家でも昔は稲架掛けをしていましたが、天日干しされたお米の味は格別でした。おそらく稲の天日干しによってビタミンDが補給されていたのでしょう。

稲穂から籾(もみ)を切り離し、硬い籾殻を取り外したものが玄米です。「黒米」とも呼ばれますが、実際の色は黄色です。玄米は、果皮、種皮、糊粉層からなる糠層に包まれているため、白米と比べて硬く、煮炊きに時間がかかり、咀嚼も大変です。精米された白米とは、玄米から果皮、種皮、糊粉層をすべて取り除いた「胚乳」だけの状態なのです。

白米食の意外と浅い歴史

現在のような白米が普及し始めたのは、実は江戸時代の中期1700年ごろの元禄時代です。しかし白米の普及は富裕層の江戸市民だけでした。そして同時期に、ビタミンB1不足による脚気が江戸に流行し、「江戸わずらい」と呼ばれるようになりました。

現在のように日本全国の庶民階級に白米食が普及したのは明治時代になってからのことです。日本における白米食の歴史は、人類300万年の歴史の中でわずか100年余りという、極めて浅い歴史なのです。これほど歴史が浅いと、人体が安全に対応できているとは考えにくく、弊害が出てもおかしくないほど新しい食べ物と言えるでしょう。

縄文時代の知恵:発芽玄米の可能性

日本がお米を食べるようになったのは縄文時代の末期、約3000年前と言われています。当然、現在のような高精度な精米技術はありませんから、せいぜい三分づき程度の玄米を食べていたと思われがちです。

しかし興味深いことに、縄文時代の人々は低温(600~900度)で焼かれた土器に玄米と水を入れて、囲炉裏などの灰に差し込んでおき、少し熱を加えて保温し発芽を促進させて、発芽玄米を食べていた可能性が高いのです。玄米に水を浸すだけで常温発芽させることは可能ですが、時間がかかりすぎるからです。

この尖った土器は、低温焼成で形状から熱の対流が理想的で、万遍なく熱が伝わり灰にも差し込みやすく、発芽に理想的な器だったのです。これで、立つことのできない変形土器の用途がようやく理解できます。

「生きている米」と「死んでいる米」

ここで「発芽玄米」という概念が登場しますが、縄文人が発芽のメリットを知っていたとすれば驚くべきことです。

現代人が白米を食べても脚気にならないのは、昔と違って現在は米以外のおかずを豊富に食べるためと考えられます。昔は一汁一菜が基本で、ご飯を大量に摂り、おかずの量も数も少なかったことが、ビタミンB1不足の原因となっていました。玄米から精米した白米を主食とし、副食を十分に摂らない日本人の食習慣が脚気の背景にあったのです。

発芽玄米とは「玄米が発芽したもの」ですが、籾殻の外皮を剥がれた玄米にそれでも発芽能力があるということは、驚くべき生命力を持っていると言えます。対して「胚乳だけの白米」は生命を司る部分を排除しているため、芽を出す能力は全くありません。つまり、**「玄米は生きている米」、「白米は死んでいる米」**と表現できるでしょう。

玄米と発芽玄米の違い

玄米は発芽すると全体に柔らかくなります。「発芽」という植物生理に基づいて、玄米の場合も発芽が始まると糖化酵素の働きで胚乳が軟化し、糠層も軟らかくなっていきます。

発芽した玄米を炊飯する際、玄米のように事前に水に浸す必要はありませんし、圧力鍋を使うことなく普通の家庭用炊飯器で白米と同じように炊飯できます。しかも、玄米では不可能だった白米と発芽玄米との混合炊飯も簡単にできます。

炊き上がりも玄米よりはるかに軟らかく、何回も咀嚼する必要がなく白米に近い食感で食べられます。さらに、玄米で問題となる果皮や種皮の皮が口の中に残ることもありませんし、消化吸収も高まります。

種子の栄養価:自然界の教え

植物の種子は、動物の卵と同じように次世代の生命を誕生させる栄養分をすべて体内に凝縮しているわけですから、植物の中でも最も高い栄養価を持っています。米だけでなく、ゴマ、胡桃、スイカ、ナッツなど、種子というものは植物の最高の栄養部位なのです。

興味深いことに、野生動物は甘く熟した果実は食べず、種を真っ先に食べます。人間は逆に、野菜や果物の種を真っ先に捨ててしまいます。食に関しては、人類より野生動物の方が賢いのかもしれません。

発芽時の栄養活性化

発芽するということは、いよいよ芽を出すということですから、種子内のエネルギーが最高に活性化されるためです。発芽と言っても殻を破って芽を出しただけではまだ完了ではありません。根を出して大地におろし、自立して成長できる状態を整えなければなりません。

そのための必要なエネルギーが最初から種子に備蓄されているわけではありませんので、種子は新たに必要とするエネルギーを生み出す作業を開始します。この時、種子内で化学変化が起こり、稲の種子の場合は、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの含有量が増大します。つまり、発芽すると様々な栄養素と旨みが増大するのです。

そのピークになるのが、芽が「はと胸」状態(1mm程度)になった時です。これを超えて伸びると種子の栄養価は逆に低下していきます。最高の発芽玄米を得るには、このはと胸状態で芽の成長を止める必要があります。

つまり発芽玄米とは、玄米の硬さを無くし、栄養価をさらに活性させた米という感じです。「玄米は眠っている米」、「発芽玄米は起きている米」と表現できるでしょう。

まとめ

健康回復には理由を理解することが重要です。結果だけを求めていると、思わぬことに遭遇した時、自分で正確な判断ができなくなる可能性があります。健康は本来自分でコントロールするものですが、そのコントロール方法は自然界に答えがあると思われます。

江戸時代の白米普及と脚気の流行、縄文時代から続く稲作の歴史、そして現代における玄米の豊富な栄養成分を考慮すると、私たちの食生活について改めて考える必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

2代目たたき上げ社長です。経営者と社員の狭間で苦しんだ経験から、中間管理職の孤独や板挟みの辛さを痛感しています。上司と部下、理不尽な要求、成果への重圧に悩むあなたに寄り添い、解決のヒントを発信します。

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