近年導入されたメタボ検診で注目されるメタボリック・シンドロームは、「内臓脂肪症候群」と訳されることが多いですが、正確には「代謝異常症候群」を指します。
診断基準
メタボリック・シンドロームの診断基準は以下の通りです:
- 腹囲:85cm以上
- 高血圧:収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上
- 高脂血症(中性脂肪高値):150mg/dl以上(正常値:50~149mg/dl)
- HDL(善玉)コレステロール値:40mg/dl未満(正常値:40~70mg/dl)
- 高血糖:110mg/dl以上(正常値:70~109mg/dl)
これらの項目のうち2つ以上に該当する場合、メタボリック・シンドロームと診断されます。現代の日本人中年男性の約50%がこの状態にあるとされています。
本質的な問題:栄養過剰
これらの数値を詳しく見ると、ほとんどが基準値を上回る「高い数値」であることが分かります。つまり、メタボリック・シンドロームの本質は「栄養過剰病」、言い換えれば「食べすぎ」による症状群なのです。
免疫システムと食事の関係
白血球の働きと栄養状態
「免疫」とは、病気から身体を守るために備わった能力で、主に血液中の「白血球」という単細胞生物の活動によって成り立っています。
食事を摂取すると、栄養素が胃腸から吸収されて血液中の栄養状態が向上します。しかし、白血球も同様に栄養で満たされると、外部から侵入する病原菌やウイルス、アレルゲン、さらにはがん細胞に対しても、十分に摂食しなくなる現象が起こります。
空腹時間の重要性
逆に空腹時には、血液中の栄養状態が低下し、白血球も空腹状態になります。この状態では、白血球は病原菌やアレルゲン、がん細胞を積極的に摂食します。
これが「空腹時間を一日12時間確保する」ことが推奨される理由です。空腹時の白血球の活発な働きにより免疫力が向上し、日常的な身体のメンテナンスが効率的に行われます。
古代の知恵
この概念は決して新しいものではありません。約6000年前のエジプトのピラミッドの碑文には、「人は食べる量の4分の1で生きている、他の4分の3は医者の糧になっている」と記されており、古代から食べすぎと病気の関係が認識されていたことが分かります。
人類の進化的背景
飢餓との共存史
人類約300万年の歴史において、約299万9900年間は飢餓状態での生活が常態でした。この長期間にわたって、人類のDNAは「空腹状態での健康維持」に適応してきました。
しかし、現在のような飽食状態は、人類史上わずか数十年という極めて短い期間でしかありません。そのため、過剰な糖分、脂肪、タンパク質が体内に流入した際の対処法が、遺伝的にプログラムされていないのが現状です。
穀類摂取の歴史的背景
小麦や米などの穀類の栽培が始まったのは約1万年前で、人類史の中では比較的新しい食材です。そのため、穀類に含まれるグルテンやフィチン酸などの物質の完全消化には、人体がまだ完全に適応していません。これがリーキーガット症候群などの原因の一つとされています。
一説によると、人類がグルテンの完全消化に適応するには、さらに100万年を要するともいわれています。
現代と過去の生活様式の比較
過去の人々の体力と食生活
過去の人々は現代基準では痩せ型でしたが、驚異的な体力を持っていました。農作業を例に取ると、田植え機やコンバインなしで手作業による稲作は、現代人には想像を絶する重労働です。
しかし、当時の人々の食事は非常に質素で、沢庵や梅干しのおにぎり程度が日常的でした。この事実は、現代の「健康的な食事」の概念を見直す必要性を示しています。
健康の真の指標
現代では、外見的な体型が健康の指標として重視される傾向がありますが、真の健康とは元気に動けるタフさにあると考えられます。痩せていることを問題視する現代の価値観は、「痩せ=貧困」という連想から生まれた偏見の可能性があります。
自然界からの学び
野生動物の生活パターン
野生動物は一日中食物を探して歩き回り、わずかな食料しか得られません。2~3日食べられないことも珍しくありません。しかし、彼らは:
- 常に運動により筋肉を動かしている
- 体温が高く、筋力が豊富
- 常に空腹状態のため病気をしない
このように、野生動物は特別な学習をすることなく、自然に理想的な健康生活を送っています。
ペットとの対比
一方、ペットは予防接種や高級な餌など手厚いケアを受けていますが、生活習慣病に罹患することが多々あります。これは、先進国に住む現代人の状況と類似しています。
医療費増加と病気の関係
1980年代の医師数は約13万人でしたが、現在は約30万人に急増しています。年間30兆円を超える医療費が消費されているにもかかわらず、病気や病人の数は減少していません。この現象の一因として、食べすぎによる栄養過剰が挙げられます。
まとめ
メタボリック・シンドロームの真相を理解するには、人類の進化的背景と現代の生活様式の乖離を認識することが重要です。健康に関する知識を学校教育のような○×方式で学ぶのではなく、人類のルーツと自然界の法則を理解することで、より根本的な健康維持の方法が見えてきます。
現代人は、飢餓に適応してきた人類の遺伝的特性を理解し、適切な空腹時間の確保と適度な運動により、本来の健康状態を取り戻すことが可能です。
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