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奄美大島リゾート計画頓挫から学ぶ市民の力 〜自然保護と持続可能な観光の在り方〜

2019年、奄美大島で計画されていた大型クルーズ船寄港地開発計画が、地域住民や環境保護団体の強い反対を受けて見直されることとなりました。2019年8月23日に鹿児島県大島郡瀬戸内町の鎌田愛人町長より、町内西古見「池堂」地区での客船就航計画誘致の撤回方針が発表されたのです。

この出来事は、市民の声が大企業や行政の計画を見直させる力を持っていることを示す重要な事例となりました。

目次

計画の背景と内容

国の観光戦略との関連

この計画の背景には、国の観光政策がありました。「明日の日本を支える観光ビジョン―世界が訪れたくなる日本へ―」が策定されたのは2016年3月。ビザの緩和や多言語での情報発信といった対策と併せて、クルーズ船受け入れの更なる拡充が打ち出された。寄港地を整備し、クルーズ旅客を2020年までに500万人に増やすのが目標だというとされていました。

具体的な計画内容

奄美大島南部・瀬戸内町に持ち上がった大型クルーズ船の寄港地開発案が、地域住民や鹿児島県の専門家を動揺させている。中国本土の有力旅行誌で9年連続「最も優れたクルーズビジネス」と評された中国人副社長が運営するロイヤル・カリビアン・インターナショナルは、同社では日本初の独占チャイナリゾート計画を瀬戸内町に2019年2月、提案したのです。

計画地は人口40人弱の集落・西古見(にしこみ)。ここに定員5400人の大型クルーズ船が寄港する計画が持ち上がっているという規模の大きなものでした。

住民への情報開示の問題

秘密裏に進められた計画

この計画には、住民への情報開示に関する深刻な問題がありました。この計画は住民に周知されていなかったという。「2017年8月、国交省の調査結果が出た翌日、瀬戸内町は西古見集落に行って説明会を開催。そしてそのまま町の経済4団体、議会の承認を経て、2017年12月に鹿児島県へ要望書を提出していました。しかし、ほとんどの町民はクルーズ船寄港地誘致の話があることも、県に要望書が提出されたことも知らされていませんでした」

住民の反応

町民が初めてこの話を知ったのは、2018年1月。「瀬戸内町にクルーズ船誘致 町方針最大22万トン級」という見出しの新聞報道でしたという状況で、住民の不信感が高まりました。

環境保護団体の取り組み

WWFジャパンの活動

国際的な環境保護団体であるWWFジャパンも、この計画に対して積極的な反対活動を展開しました。2019年2月15日に瀬戸内町役場において開催された第3回「クルーズ船寄港地に関する検討協議会」で、奄美大島でも特に生物多様性の豊かな一方で、人口が40名に満たない西古見集落周辺での客船の寄港地開発がロイヤル・カリビアンクルーズ社より説明されたことを受け、緊急声明を発表しました。

科学的根拠に基づく反対

WWFジャパンは保全を前提とした科学的評価がないまま、大規模な観光開発計画が進められる可能性が高いことへの懸念と共に、見直しを求める声明を発表。さらに4月には、対象海域の緊急調査を実施し、この調査結果を基に、6月19日に再度、計画の見直しと地域の関係者が参加した持続型観光利用計画の構築を求める要望を、町及び国、県など関係諸機関に対し行なってきたのです。

龍郷町での類似計画の経緯

実は、瀬戸内町での計画の前に、2016年6月に発表された、芦徳の大型クルーズ船寄港地、リゾート開発計画には環境破壊の懸念が出たため、白紙撤回となったという龍郷町での類似計画がありました。

当時は、奄美大島内外の関係者も駆けつけて抗議。龍郷町側も反対し、立ち消えとなった。だが、このたび同じ計画が、奄美大島南部の瀬戸内町で浮上したという経緯があったのです。

奄美大島の自然価値

世界自然遺産の価値

奄美大島は2021年7月にユネスコ世界自然遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」に認定登録されました。アマミノクロウサギなど、世界的に見ても貴重な生物の固有種、希少種が暮らすありのままの大自然は、歴史を感じる壮大な絶景ばかりですという貴重な自然環境を有しています。

このような価値ある自然環境の保護と観光開発の両立が、重要な課題となっています。

現代社会における構造的課題

大企業と地域住民の力関係

この事例は、現代社会における構造的な問題を浮き彫りにしています。戦後から現在まで、政府と連携した大企業による開発戦略が、しばしば地域の自然環境や住民の生活に大きな影響を与えてきました。

しかし、今回の奄美大島の事例は、個人や地域住民の考えが良い方向にまとまることで、大企業の計画を見直させることができることを示しています。

真の豊かさとは何か

「お金さえあれば」という価値観に支配されがちな現代社会において、本当に大切なもの、必要なものを見極めることの重要性が改めて問われています。

奄美大島の豊かな自然や文化は、先祖代々受け継がれてきた宝物であり、短期的な経済利益のために失われるべきものではありません。

持続可能な観光の在り方

地域主体の観光開発

瀬戸内町においては今後、町内に有する大島海峡やその周辺森林域及びそこに生息するアマミホシなどの自然環境を活かした、地域主体の持続可能な観光開発が求められています。

大型クルーズ船による大量の観光客受け入れではなく、地域の自然や文化を尊重し、住民が主体となった観光の在り方を模索することが重要です。

市民参加の重要性

情報公開と民主的プロセス

今回の事例で明らかになったのは、行政が重要な決定を行う際の情報公開と、住民参加の重要性です。地域に大きな影響を与える計画については、初期段階から住民に十分な情報を提供し、民主的なプロセスを経て決定されるべきです。

個人の力と集合的行動

支配層と呼ばれる少数の権力者に対して、個人では力が及ばないかもしれません。しかし、個人それぞれが正確な情報に基づいて判断し、考えを共有し、集合的に行動することで、社会を変える力を持つことができます。

健康と環境の関連性

病気と環境の関係

先進国が病気大国と化している背景には、環境の悪化も大きく関係しています。自然環境の破壊は、最終的に人間の健康にも影響を及ぼします。

自分の体に本来備わっている自然治癒力を活かすためにも、清浄な自然環境の保護は不可欠です。

まとめ:希望ある未来への道筋

奄美大島のリゾート計画頓挫は、権力や資本の力ではなく、市民の声と科学的根拠に基づいた環境保護の重要性を示した貴重な事例です。

個人の考えと行動が束になることで、明るい未来を創造することができるという希望を与えてくれました。真に大切なものを見極め、持続可能な社会の実現に向けて、一人ひとりが責任を持って行動することが求められています。

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この記事を書いた人

2代目たたき上げ社長です。経営者と社員の狭間で苦しんだ経験から、中間管理職の孤独や板挟みの辛さを痛感しています。上司と部下、理不尽な要求、成果への重圧に悩むあなたに寄り添い、解決のヒントを発信します。

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