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食用油の製法と品質の違い 〜健康的な油選びのポイント〜

食用油の品質について考えるきっかけとなったのは、フランスから送られてきたオリーブオイルとの出会いでした。現地の小規模農家が無農薬栽培で育てたオリーブを、伝統的な製法で搾ったそのオイルは、日本で一般的に販売されているものとは全く異なる味わいでした。

フレッシュな香り、全く油っこさを感じない軽やかさ、そして野菜や魚の味を格段に引き立てる力。この体験から、油の製法と品質が健康と美味しさに与える影響の大きさを実感することとなりました。

目次

食用油市場の現状

日本の食用油事情

日本の食用油市場では、残念ながら品質に問題のある製品が多く流通しているのが現状です。特にオリーブオイルにおいては、以下のような問題が指摘されています:

品質上の課題:

  • 他の安価な油脂の混入(大豆油、キャノーラ油など)
  • 化学的処理による品質劣化
  • 表示と実際の品質の乖離
  • 水素添加による硬化油の使用

表示の問題: 「エキストラバージン」「低温圧搾」等の表示があっても、実際の製法や品質が伴わない場合があることが業界関係者により指摘されています。

世界的な傾向

この問題は日本に限ったものではありません。フランスをはじめとするヨーロッパ諸国でも、工業的に製造された安価な油が主流となり、伝統的な製法で作られた高品質な油は高級品として位置づけられています。

食用油の主要な製法

食用油の品質を左右する最も重要な要素は製法です。主要な製法とその特徴を詳しく見てみましょう。

1. 玉締め圧搾法(伝統的圧搾法)

製法の特徴:

  • 昔ながらの伝統的な圧搾抽出法
  • 物理的な圧力のみで油を抽出
  • 化学薬品や添加物を一切使用しない
  • 低温での処理(60度以下)

メリット:

  • 原料本来の風味と栄養素を保持
  • 天然の抗酸化物質が残存
  • 化学的変化が起こらない
  • 安全性が極めて高い

デメリット:

  • 抽出効率が低い(20〜30%程度)
  • 時間と手間がかかる
  • 製品価格が高くなる

2. 高温圧搾法

製法の特徴:

  • 原料を170度程度に加熱して圧搾
  • 玉締め法より抽出効率が向上(60〜70%)

問題点:

  • 高温により栄養素が破壊される
  • 酸化が進行しやすくなる
  • 本来の風味が損なわれる

3. 溶媒抽出法(化学抽出法)

製法の特徴:

  • ノルマルヘキサン等の化学溶媒を使用
  • 高温処理(250度以上)を複数回実施
  • 抽出効率が極めて高い(99%以上)

製造工程:

  1. 化学溶媒による油分の抽出
  2. 高温による溶媒の蒸発
  3. 苛性ソーダによる中和処理
  4. 活性白土による漂白
  5. 高温蒸気による脱臭処理

深刻な問題点:

  • トランス脂肪酸の生成:安全なシス型脂肪酸が有害なトランス型に変化
  • 栄養素の破壊:ビタミンや抗酸化物質が除去される
  • 化学残留物のリスク:溶媒や処理剤の微量残留の可能性
  • 酸化の進行:開封後の劣化が激しい

4. 低温圧搾法(コールドプレス法)

製法の特徴:

  • 60度以下の低温で圧搾
  • 化学薬品を使用しない
  • ゆっくりと時間をかけて抽出

利点:

  • 栄養素とビタミンを保持
  • 天然の抗酸化力を維持
  • フレッシュな風味を保つ
  • 高い安全性

考慮点:

  • 抽出効率が低い
  • 製品価格が高い
  • 保存期間が比較的短い

トランス脂肪酸の健康リスク

生成メカニズム

化学抽出法や高温処理により、天然の「シス型」脂肪酸が人工的な「トランス型」脂肪酸に変化します。この構造変化が深刻な健康リスクを生み出します。

科学的に確認されている健康への影響

心血管系への影響:

  • 悪玉コレステロール(LDL)の増加
  • 善玉コレステロール(HDL)の減少
  • 動脈硬化の促進
  • 心疾患リスクの大幅な増加

代謝への影響:

  • インスリン抵抗性の増加
  • 2型糖尿病のリスク増加
  • 肥満の促進

炎症反応:

  • 慢性炎症の促進
  • 免疫機能の低下

健康的な油選びのポイント

製法による選択基準

最優先で選ぶべき製法:

  1. 玉締め圧搾法
  2. 低温圧搾法(コールドプレス)

避けるべき製法:

  • 溶媒抽出法
  • 高温処理を含む工業的製法

表示の確認方法

信頼できる表示:

  • 「低温圧搾」「コールドプレス」
  • 「化学溶媒不使用」
  • 製造者の詳細情報
  • 有機JAS認証マーク

注意すべき点:

  • 表示だけでなく製造元の信頼性も重要
  • 価格が極端に安い場合は品質を疑う
  • 大手メーカーの大容量商品は工業的製法の可能性が高い

小規模製油所の価値

推奨する理由:

  • 伝統的製法の維持
  • 品質への強いこだわり
  • 透明性の高い製造工程
  • 地域に根ざした信頼関係

選択時の考慮点:

  • 価格は高くなるが、健康価値を考慮すると妥当
  • 少量ずつ購入して新鮮さを保つ
  • 直接購入や信頼できる販売店の利用

外食産業での油の現状

ファーストフードや惣菜の問題

使用される油の特徴:

  • 極めて安価な溶媒抽出油
  • 品質よりもコスト重視
  • 繰り返し使用による劣化

健康への影響:

  • 大量のトランス脂肪酸摂取
  • 酸化した油による悪影響
  • 栄養価の低下

対策としての提案

外食時の注意点:

  • 揚げ物の摂取頻度を控える
  • 品質にこだわる店舗の選択
  • 家庭での調理を基本とする

経済性と健康のバランス

投資としての考え方

高品質な油は確かに高価ですが、以下の観点から「投資」として考えることができます:

健康への投資:

  • 生活習慣病の予防
  • 長期的な医療費の削減
  • 生活の質の向上

美味しさへの投資:

  • 料理の味の大幅な向上
  • 食事の満足度向上
  • 食文化の豊かさ

実践的な取り組み方

段階的な改善:

  1. まず日常使いの油を良質なものに変更
  2. 外食での揚げ物を控える
  3. 加工食品の摂取を減らす
  4. 手作り料理の比率を増やす

保存と使用上の注意

高品質油の適切な保存方法

保存のポイント:

  • 遮光性の容器で保存
  • 冷暗所での保管
  • 開封後は早めに使用
  • 酸素との接触を最小限に

使用上の注意:

  • 加熱温度に注意(製法により適温が異なる)
  • 繰り返し使用は避ける
  • 酸化の兆候(臭いや味の変化)に注意

まとめ

食用油の品質は製法によって大きく左右されます。溶媒抽出法による安価な油は、コスト面では魅力的ですが、健康面では深刻なリスクを伴います。

一方、伝統的な圧搾法で作られた油は価格は高くなりますが、栄養価、安全性、美味しさの全ての面で優れています。

健康的な食生活を送るためには、サプリメントや特別な食材に投資する前に、まず日常的に使用する基本的な調味料である油の品質を見直すことが重要です。

真の「お得」とは、単に価格が安いことではなく、健康と美味しさを両立できる価値ある商品を選ぶことなのです。

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この記事を書いた人

2代目たたき上げ社長です。経営者と社員の狭間で苦しんだ経験から、中間管理職の孤独や板挟みの辛さを痛感しています。上司と部下、理不尽な要求、成果への重圧に悩むあなたに寄り添い、解決のヒントを発信します。

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