「もう少し待てば株価は戻るはず」
そう思って売却を先延ばしにした結果、含み損がどんどん膨らんでしまった。そんな経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。
投資において最も難しいのは、実は銘柄選びではありません。適切なタイミングで損失を確定させる「損切り」という行動なんです。頭ではわかっていても、いざその場面になると「もったいない」「きっと戻る」という気持ちが邪魔をして、なかなか実行できないものですよね。
この記事では、なぜ私たちは損切りができないのか、その心理的な理由を解き明かしながら、感情に左右されずに合理的な投資判断を続けるための具体的な仕組みづくりについてお伝えします。投資初心者の方でも今日から実践できる内容ですので、ぜひ最後までお読みください。
なぜ損切りができないのか?人間の心理を知ろう
損切りとは、一定の損失が発生した時点で保有している株式などの金融商品を売却し、損失を確定させることを意味します。言葉にすると簡単ですが、実行するのは本当に難しいものです。
損失を確定させたくない心理が働く
人間には本能的に「利益を得ることよりも損失を避けたい」という心理が備わっています。これを専門的には「損失回避性」と呼びます。
たとえば、1万円もらえる喜びよりも、1万円失う悲しみのほうが心理的なインパクトは大きいと感じませんか?この心理が投資の場面では厄介な存在になります。
株を売却して損失が確定することへの強い抵抗感が生まれ、「売らなければ損失は確定しない」という考えに陥りやすくなるのです。さらに「自分の判断が正しかったことを証明したい」という気持ちも重なり、客観的には売却すべき場面でもズルズルと保有を続けてしまいます。
希望的観測が冷静な判断を妨げる
株価が下がっているときほど、私たちは「いずれ回復するだろう」という根拠のない楽観的な見通しに頼りがちです。
「この会社の業績は悪くないから、きっと株価も戻るはず」「市場全体が調整しているだけだから大丈夫」といった希望的観測は、冷静なリスク評価を困難にします。
投資における「リスク」とは単純に「危険」という意味ではなく、「不確実性」を指します。利益になるか損失になるか、どちらに転ぶかわからない状態のことです。この不確実性を正しく認識できなくなることが、損切りの遅れにつながるのです。
感情を排除する3つの仕組みづくり
「次こそは冷静に判断しよう」と決意しても、感情はなかなかコントロールできません。だからこそ、精神論ではなく仕組みで解決するアプローチが効果的です。
仕組み1 株を買う前に損切りルールを決めておく
最も基本的かつ重要なのが、株式を購入する前に明確な損切り基準を設定しておくことです。
具体的には次のようなルールが考えられます。
- 購入価格から5%下落したら売却する
- 設定した期間内に目標価格に届かなければ売却する
- 市場全体の大きな変動があった場合は一度ポジションを整理する
大切なのは、このルールを例外なく守ることです。「今回だけは特別」「この銘柄は大丈夫」という考えが入ると、ルールの意味がなくなってしまいます。
投資目標を明確にしておくことも助けになります。「何のために投資をしているのか」という目的がはっきりしていれば、市場の変動や周囲の意見に流されにくくなり、冷静な判断がしやすくなります。
仕組み2 自動売買の注文機能を活用する
現代のネット証券では、便利な自動注文機能が用意されています。これを活用すれば、感情が入り込む余地を完全になくすことができます。
特に便利なのが「IFDOCO注文」と呼ばれる注文方法です。これは、買い注文が成立すると同時に、利益確定のための売り注文と損切りのための売り注文を自動でセットできる仕組みです。
一度設定してしまえば、あとは自分の判断を挟むことなく、あらかじめ決めたルール通りに売買が実行されます。「売るべきか迷う」という場面そのものをなくせるのが大きなメリットです。
仕組み3 毎日フラットな状態から判断を始める
プロの投資家が実践しているテクニックの一つに、取引終了後に口座の損益表示を一度リセットするという方法があります。
前日までの損益がマイナス表示で画面に残っていると、どうしても心理的なプレッシャーを感じてしまいます。「なんとか取り戻さなければ」という焦りから、無理な取引をしてしまうこともあります。
毎日フラットな気持ちで投資判断を始められるようにすることで、過去の損益に引きずられない冷静な判断が可能になります。
実践に向けて準備しておきたいこと
効果的な損切りの仕組みを構築するために、いくつかの準備をしておきましょう。
まず、高度な注文機能を提供しているネット証券で口座を開設することをおすすめします。ネット証券は取扱商品数が豊富で手数料も安い傾向にあり、自動売買機能も充実しています。
次に、自分のリスク許容度を把握することが大切です。投資資金は必ず生活資金と分け、仮に失っても生活に影響が出ない余剰資金の範囲内で行うことが鉄則です。
そして、小額から段階的に始めることをおすすめします。いきなり大きな金額で始めると、損失が出たときの心理的ダメージも大きくなります。まずは少額で仕組みの有効性を確認しながら、徐々に慣れていくのが賢明です。
まとめ 仕組みがあなたの投資を守る
投資における最大の敵は、市場の変動ではなく投資家自身の感情的な判断です。
損切りができないのは意志が弱いからではありません。人間の心理として当然の反応なのです。だからこそ、感情に頼らない仕組みを作ることが大切になります。
今日から始められる3つのこと
- 株を買う前に「何%下がったら売る」というルールを紙に書いておく
- 自動売買の注文機能について調べてみる
- 投資は余剰資金で行うことを改めて意識する
完璧を目指す必要はありません。まずは基本的なルールを一つ決めて、それを守ることから始めてみてください。時間をかけて経験を積み重ねることで、あなたに合った投資スタイルが見つかるはずです。


コメント